マークスの山  高村薫

2009年07月15日 05:41

2003年1月23日発行  講談社  各684円
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高村薫の直木賞を受作品です。

『マークスの山』は、合田雄一郎が登場するシリーズで、『照柿』の前の物語です。
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平成四年十月五日、都立大裏の路上で、畑山宏という暴力団員が頭をえぐられて殺された。
三日後の十月七日、王子の国家公務員住宅の前で、法務省刑事局次長の松井が、同じような凶器を使用して殺されているのが発見された。
捜査に当たっていた合田雄一郎をはじめとする強行犯捜査班3係の刑事たちは、畑山宏の弁護士林原と、殺された松井が同じ大学の山岳部に所属していたことをつきとめた。
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換気の悪い組織のなかで、いらだちを募らせつつ捜査に当たる刑事たちの姿が丁寧に描かれます。
警察組織には詳しくない私にも、28歳で警部補に昇進した合田雄一郎の苦悩が伝わってきました。

水野のような上級職と、自分のようなたたき上げのなかのエリートと、その他大勢という、似て非なるものの三段重ねで警察という組織は出来ている。そして、そのそれぞれに醜悪な日々があり、それぞれが外に対しては権力を振りかざし、内では上昇志向を剥き出しにして競り合いながら、それぞれの断層ではどこまでも交じり合うことがない。


読みごたえはありましたが、精神障害のあるの人間による連続猟奇殺人という設定が、私にはとても気になりました。

近所に知的障害のある子どもの通所施設があって、そこに通っている子どもたちと良く顔を合わせます。
そういう子どもたちが誤解されるような内容の小説は、それがフィクションだとわかっていても楽しめないなぁ、と思いました。

相剋の森 熊谷達也

2009年06月26日 11:03

2003年3月10日発行  集英社  2100円

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熊谷達也(1958〜)は、初めて読む作家です。
『相剋の森 』は、自然と共に暮らすマタギに焦点を当てた珍しい小説です。
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仙台でタウン誌の編集長をしている佐藤美佐子は、「マタギの集い」という集会に取材に出かけた。
狩猟の楽しさや、熊肉の美味しさを喜々として語るマタギ達のようすに違和感を覚えた美佐子は、「今の時代に熊を食べる必要性があるのでしょうか」と発言して、マタギ達の顰蹙を買ってしまった。
そんな美佐子に、吉本というフリーカメラマンが声をかけてきた。
男女関係のもつれからタウン誌を辞めフリーのライターになった美佐子は、マタギを題材にした記事を書こうと思いたち、吉本と連絡を取った。
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マタギという職業に対しても、ツキノワグマに関しても何の知識もなかったので、とても興味深く読みました。
熊と人間との関わりについてもっと踏み込んでほしかった、枝葉の恋愛の部分はいらなかった、と思います。
人間は野性動物とどう関わっていけば良いのかという疑問に、主人公は明確な答えを見い出せないままで小説は終わっています。
それはこの小説を書いた時点で、著者が答えを出せなかったからだろうと思います。
熊谷達也はこの作品以降もマタギや、自然とともに生活する人々を題材にした小説を執筆しているので、他の作品も追々読んで行こうと思います。

ほとんど記憶のない女   リディア・デイヴィス

2009年06月26日 08:16

2005年10月10日発行
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リディア・デイヴィスは(1947〜)アメリカの作家です。
その作風から、カフカやベケットに例えられ、「アメリカ文学界の静かな巨人」と称されているそうです。

本書は日本で出版されているリディア・デイヴィスの唯一の著作です。
ほんの数行の短い文章から長いものでも30ページ程度の掌編、短編が51編収められています。

表題の『ほとんど記憶のない女』をはじめ、読みながら、これは自分と同じだ、と何度も何度も思いました。

けれど著者は、『共感』という最後の掌編で下記のように記しています。

私たちがある特定の思想家に共感するのは、 私たちがその人の考えを正しいと思うからだ。あるいは私たちがすでに考えていたことをその人が私たちに示してくれるから。あるいは私たちがすでに考えていたことを、より明確な形で私たちに示してくれるから。あるいは私たちがもう少しで考えるところだったことを示してくれるから。あるいは遅かれ早かれ考えていたであろうことを。あいるいは、もしもそれを読んでいなかったらもっとずっと遅くに考えていたであろうことを。あるいは、もしも読んでいなかったら考える可能性があっても結局は考えなかったであろうことを。あるいは、読んでいなかったら考える意思があっても結局は考えなかったであろうことを。 


日頃、心のなかにぼんやり浮かんでは消えていく感情の断片がそのまま文章になったようだと思うのは、あまりにも的確な表現に、そんなことを思ったことも無いのに、まるで自分が同じことを感じたかのように錯覚しているだけなのかもしれません。

51編のなかで、『十三番めの女』『ほとんど記憶のない女』『二度目のチャンス』『肉と夫』『私たちの優しさ』『俳優』『理解の努力』『ノックリー氏』『たいていの場合彼が正しい』『自分の気持ち』『グレン・グールド』『裏のアパート』『大学勤め』『混沌の理由』『共感』が特に好きです。

朗読者   ベルンハルト ・シュリンク

2009年06月25日 09:46

2000年4月25日発行  新潮社  1800円



公開中の映画『愛を読むひと』の原作です。

年の差がある男女のラブストーリィ-なのかと思って読み始めたら、その後ろに人生の深い闇が隠されていました。

第二次世界大戦の敗戦国であるドイツの、戦後の物語です。
戦時中に自国の国民が行った行為をどう受け止めるのか、加害者として戦争に関わった人をどう捉えるのかが、小説のひとつのテーマになっています。
戦争には参加していない世代の主人公が、戦争加害者としての行為を受け止めようとして感じる苦悩は、同じ敗戦国に生まれた私にも理解できるような気がしました。

重いテーマを含んだ小説ですが、後半には、この小説のもうひとつのテーマである愛によってもたらされる静かな感動が待ち受けています。
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学校から帰る途中で体調を崩した15歳のミヒャエルは、介抱してもらったことがきっかけで、36歳のハンナ・シュミッツという女性と知り合い、愛し合うようになった。
ところがある日突然、ミヒャエルには何も告げずに、ハンナは姿を消してしまった。
それから数年後、法学を学ぶ大学生になったミヒャエルは、ゼミのために出向いた法廷でハンナとの再開を果たした。
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三部構成になっている小説です。
男の子の大人への目覚めを扱った作品は苦手なので、15歳のミヒャエルと36歳のハンナの恋愛を描いている一部を読んだときは途中で読むのを止めようかと思いましたが、三部の途中で泣きました。
最後まで読んでよかったです。

日本の東京裁判に当たるニュルンベルク裁判後に、ドイツが戦争加害者を裁いたアウシュビッツ裁判という裁判があったことを、この作品を読んで初めて知りました。
映画『私は貝になりたい』を観たときと同じように、戦争は戦闘や戦火での直接の被害の他にも様々な悲劇を生むということを、この小説を読みながら再び強く感じました。

照柿    高村薫

2009年06月15日 11:47

1994年7月15日発行

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照柿(てりがき)とういのは、晩秋の西日を浴びた塾柿の色だそうです。

合田刑事が登場するシリーズで、「レディ・ジョーカー」のひとつ前の作品です。
登場人物が少ないので「レディ・ジョーカー」よりは楽に読めましたが、閉塞感の強い、どんよりと暗いミステリィーでした。
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同僚の森と電車に乗っていた合田刑事は、電車のフロントガラス越しに跨線橋から赤い服の女性が落下するのを目撃した。落下する直前に赤い服の女と揉みあっていた男は逃走し、さらに青いスカートの女がその男を追うように走り去った。
電車をで降り、跨線橋の通路の壁に寄りかかっている青いスカートの女をみつけた合田は、会ったばかりのその女に強く惹かれるのを感じた。

同じ日の朝、バス停に立っていた「太陽精工株式会社羽村工場」に勤務する野田辰夫は、青いスカートをはいて歩いてくるひとりの女に目を止めた。
女は野田辰夫が結婚前に付き合っていた佐野美保子だった。
行き先を訊ねた野田辰夫に三保子は、居なくなった夫が見つかった、と応え足早に去って行った。
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工場の溶鉱炉で働く人の気持ちが、追体験できます。
レンブラントの絵のように、ほの暗い世界のなかのところどころに鮮やかな色彩が印象的に使われている小説です。
私は、「レディ・ジョーカー」のほうが好きです。

レディ・ジョーカー  高村薫

2009年06月05日 11:56

1997年12月5日発行   毎日新聞社  格1700円  
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1998年度「このミステリーがすごい!」の国内版1位になった作品です。

高村薫は初めて読みました。
数年前ですが、テレビで高村薫が話しているのを見たことがあります。
女性を感じさせない硬質な雰囲気の容姿と話し方がとても印象的で、きっと私なんかでは歯が立たないような硬くて難しい小説を書いているに違いないと、高村薫の著作には手が伸びませんでした。

そんな印象だったのに、よっちゃんのお勧めで読んでみたら、読んでいる間ずっとこの小説が終わらなければ良いのに、と思うぐらい面白かったです。
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青森県の貧しい小作農家の三男として生を受けた物井清三は、昭和22年、八戸の鋳物工場を解雇されのをきっかけに上京した。上野界隈でリヤカーを引きながらバタ屋をし、一年後やっと旋盤工の職に就き、4歳の娘を抱えた芳江と結婚した。家を売り貯金をはたいて薬局を買い取ったのは、物井清三が50歳のときだった。
1990年、物井清三の妻は既に他界し、娘の美津子は秦野浩之という歯科医に嫁いでいた。
その年の10月、孫の秦野孝之が日の出ビールの二次面接を終えた数日後に交通事故死し、11月には歯科医の秦野浩之が息子の後を追うように自殺した。物井清三は警察に呼ばれ、岡村清二について警察から質問を受けた。
岡村清二というのは、養子に行った物井清三の実兄だった。
息子の孝之が事故死した後、浩之は日の出ビールに手紙とテープを送りつけていた。そのテープは、岡本清二が日の出ビール宛てに書いた手紙を吹き込んだものだった。若い頃、日の出ビールの研究所に勤務していた岡村清二が、知人の解雇は部落差別によるものでは無いかと訴えている内容のテープだった。
そのことがきっかけとなり、物井清三は興信所に依頼し、音信不通になっていた兄・岡村清二の行方を探し始めた。
1994年5月に岡村清二が秋川の特擁老人ホームにいると確認されて以来、物井清三は一日置きに見舞いに訪れていた。
三ヵ月後、いつものように老人ホームを訪れた物井清三は、6人部屋のベッドで死んでいる兄を発見した。
頭の中で悪鬼の声を聞いた物井は、日の出ビールから金を搾り取ることを思いつき、競馬仲間を誘った。
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登場人物の背景と心理が詳細に描かれているクオリティーの高い厚みのある小説でした。

7人の男性の視点が入れ替わりながら物語が進行していきます。
職種の異なるその7人の男性のなかで、私は物井さんが一番好きです。
自己の苦悩のなかで彷徨っている他の登場人物と比べて、物井さんは常に自分以外の誰かを気遣っています。
物井さんが犯罪に手を染めたのも、単なる私憤からではなく、世の中の理不尽さに対する怒りからのように感じました。
その物井さんの怒りは、弱者に心を寄せる著者の怒りでもあると思いました。
「レディ・ジョーカー」というタイトにも、そんな著者のスタンスが現れてるのではないかと思います。

物井さんを中心とした犯人グループに肩入れしながら読んでいたので、大満足の結末でした。

オリンピックの身代金     奥田英朗

2009年05月25日 15:29

平成20年11月30日発行  角川書店  1800円
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精神科医伊良部シリーズとは趣を異にした重量感のあるクライムノベルです。
格差社会という言葉を実感として感ることも多くなった昨今ですが、オリンピックが開催された昭和39年の日本には、今とは比較にならないほど大きな社会格差があったようです。
著者は本書のなかに東京の裕福な家庭で生まれ育った須賀忠と、秋田の貧農出身の島崎国男という対照的な二人の青年を登場させ、当時の日本の格差を解り易く浮き彫りにしています。
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昭和39年8月22日、警察幹部の屋敷にダイナマイトが仕掛けられ、小火騒ぎが起きた。
警視庁には草加次郎と名乗る人物から「オリンピックのカイサイをボウガイします」という脅迫状が送られてきた。
8月26日にも同じ人物から封書が届き、中野の警察学校宿舎の内部が爆破された。
脅迫文に使われた切り抜き文字が「無線と科学」という雑誌の3月号と判明し、警察がローラー作戦を敷くと、島崎国男という東大大学院生の名前が浮上してきた。
その島崎国男は、死んだ兄が働いていた建設現場で、慣れない重労働に汗を流していた。
9月に入ると、今度は建設中のモノレールの橋脚が爆破された。
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読後、一番印象に残ったのは、オリンピックの開催に間に合うようにと建設現場で酷使されていた出稼ぎ労働者たちの様子でした。
いったいオリンピックが決まってから、東京でどれだけの人夫が死んだのか。ビルの建設現場で、橋や道路の工事で次々と犠牲者を出していった。新幹線の工事を入れれば数百人に上るだろう。
それは東京を近代都市として取り繕うための地方が差し出した生贄だ。
それならいっそのこと、オリンピックから身代白金を奪ってやろう、と考える主人公を生み出した奥田英朗に、私は「サウスバウンド」を読んで感じたような反骨精神を、再び感じました。

白昼の死角     高木彬光

2009年05月24日 10:43

1997年5月3発行  読売新聞社   1500円


以前、「光クラブ」事件を取り上げたテレビ番組を見ました。
「光クラブ」は戦後まもなく東大生山崎晃嗣らが始めた闇金融です。
資金繰りに失敗し、天才と謳われた山崎晃嗣が青酸カリによる服毒自殺を遂げ終焉を迎えたというショッキングな事件でした。

『白昼の死角』は、その「光クラブ」をモデルにした「太陽クラブ」の残党鶴岡七郎と高木彬光が箱根の温泉で知り合ったところから始まります。
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東大生法学部二年の隅田光一は教授陣から元首相若槻礼次郎以来の天才と折り紙を付けられ、将来を嘱望されている学生だった。
その隅田が「20万で20億の金を作る方法がある」と、学友の鶴岡七郎、木島良助、九鬼善司を誘い、金融業「光クラブ」を発足させたのは昭和23年1月のことだった。
「太陽クラブ」は、現役の東大生が経営しているという事実が客の信頼を呼び、その年の暮れには「東都金融」という株式会社を設立する躍進ぶりだった。
しかし、鶴岡七郎は、カリスマ経営者隅田の欠点が次第に目につくようになり、会社の将来に不安を感じ始めた。
翌昭和24年、七郎の懸念は現実のものとなり、社長の隅田光一と副社長の木島良助が詐欺と物価統制令違反の容疑で逮捕された。
詐欺罪の窮地から二人を救うために七郎は株券の引換証を利用した詐欺の計画を立てた。詐欺は成功し隅田と木島は釈放された。しかし、その半年後に隅田は焼身自殺。「太陽クラブ」は幕を閉じた。
職を失った七郎は、企業を相手にした新たな詐欺の計画を立て始めた。
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この小説が最初に出版されたのは1960年ですが、まったく古さを感じませんでした。鶴岡七郎が詐欺を実行していくその手口の鮮やかさに、ぐいぐい引き込まれて読みました。
1920年生まれの高木彬光は、小説のなかで犯罪の手口だけではなく、敗戦によりモラルを喪失した人々の心の在りようにも随所で触れています。
混沌とした時代のなかで指針を見失い犯罪に手を染めていった当時の若者の気持ちを、その時代を生きたことがない私も追随しながら読むことが出来ました。

敗戦により戦後の日本人の心に焼きついた「勝てば官軍」という思想や、若者の刹那的な生き方は、このときから連綿と続いて現在に至っているのではないか、と思いました。

寝盗る女          マーガレット・アトウッド

2009年05月16日 07:56

2001年4月25日発行  彩流社  上2500円 下2800円

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悪女に標的にされた三人の女性の物語です。
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レバノンで起きたテロに巻き込まれてズィーニアが亡くなったと知ったトニー、カリス、ロズは、彼女の追悼式に出かけた。
かつて四人は同じ大学に在籍し、トニー、カリス、ロズの三人は同じ女子寮に住んでいた。
ズィーニアに手酷い痛手を負わされて、結束を結んだ三人だった。
ズィーニアはトニー、カリス、ロズのそれぞれに取り入り、恋人や夫を奪い去ったのだ。
追悼式の後も定期的に顔を会わせていた三人の前に、死んだはずのズィーニアが姿を表した。
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ズィーニアの悪女ぶりが凄いです。
こんな女性とは絶対に知り合いになりたくない。
死んだと思っていたのに生きているところなんかは映画の「エイリアン」のようで怖いです。

ジャイアンツ・ハウス  エリザベス・マクラッケン

2009年05月15日 12:05

1997年7月30日発行  新潮社    2400円 
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表紙のイラストとタイトルとからは想像がつきませんが、ラブ・ストーリーです。
ラブ・ストーリーだけど甘ったるくないお話で、私は好きです。
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人間にあまり興味がない図書館司書のペギーは、図書館にやってきた背の高い少年ジェイムズのどこかバランスの悪いところに惹かれ、しだいに恋するようになった。
11歳で身長が既に185センチだったジェームズは、12歳出190センチ、16歳のときには225センチになり、さらに延び続けていた。
ペギーの愛するジェームスは巨人症というあまり長生きできない病気に罹っていたのだった。
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相手のどこか変わったところが好き、というペギーの気持ちは良くわかります。
かっこいいところより、朴訥なところや要領の悪いところを見て、男性を好きになる女性は意外に多いんですよ。

ザ・ギバー   ロイス・ローリー

2009年05月15日 11:34

1995年9月20日発行   講談社  1400円

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近未来ディストピア小説です。
あっというまに読めるわりには内容があって面白かったです。
設定が、竹宮恵子の「地球へ」と似ています。
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11歳のジョーナスが生きているのは、何度もの戦争を体験した末に人間が考え出した「ユートピア」の筈だった。
そこでは誰もが苦悩することなく日々を暮らしていた。
子どもが12歳になると、それぞれに適した職業が与えられ、ジョーナスはコミュニティーの次代「記憶を受け継ぐ者」に決まった。
「記憶を受け継ぐ者」は、その名が示すとおりはコミュニティーで唯一過去の記憶を所有している人間だった。
「記憶を受け継ぐ者」から少しずつ記憶を伝えらたジョーナスは、スポイルされて生きている人間たちの生活に疑問を抱き始めた。

昏き目の暗殺者    マーガレット・アトウッド

2009年05月06日 11:34

2002年11月20日発行  早川書房  3400円

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ブッカー賞、ダシール・ハメット賞を受賞した作品ですが、正直なところ途中で飽きました。
物語が進展しないし、途中に挟まれいるSFまがいの部分も内容が散漫で嫌になりました。
SFは結構読んでいて好きですが、これは頂けないと思います。
最後まで読むと、どんでん返しがあってそういう話だったのかと思いますが、なにせ途中のどうでも良いような部分があまりにも長いんですよ。
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釦工場で財をなしたチェイス家は町一番の名家だったが、アイリスとローラのチェイス家の姉妹が10代になった頃には釦工場は倒産寸前だった。
アイリスは18歳で実業家のリチャード・グリフェンに嫁ぎ、父が亡くなると妹のローラもグリフェン家に引き取られた。
それから9年後、ローラは車で橋から転落し死亡した。
82歳になったアイリスは、ローラの死と、ローラが残した「昏き目の暗殺者」という小説について語り始めた。

またの名をグレイス  マーガレット・アトウッド

2009年05月04日 11:37

2008年5月29日発行  岩波書店 各2800円

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『またの名をグレイス』は、アトウッド作品の最高傑作として評価されている作品だそうです。

1843年にカナダで実際に起きた殺人事件を元にした小説です。
犯罪小説でもありますが、アトウッドが描きたかったのは貧しい移民女性の半生だと思います。
人生を選択することが出来なかった当時の女性の代表として、アトウッドは殺人犯グレイス・マークスの半生を描いたのではないかと思います。
グレイスを診察する精神科医サイモン・ジョーダン博士を三人称で描いた部分と、グレイスの独白の部分とが交差する技巧を凝らした作りで物語は進行していきます。
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家族と一緒にアイルランドからカナダへ移住してきたグレイス・マークスは、13歳で住み込みの女中の仕事に就いた。
殺人事件が起きたのは、グレイスの三箇所目の仕事先のキニア邸だった。
主人のトマス・キニアと女中頭ナンシー・モンゴメリーを殺害した罪により16歳のグレイス・マークスは逮捕され、終身刑が言い渡された。
若き精神科医サイモン・ジョーダン博士はグレイスの精神状態を調べるために、懲治監長の応接間でグレイスとの面談を重ねた。
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結構な暑さの上下巻ですが、冗長な感じはしませんでした。
重厚で読み応えのある小説でした。

侍女の物語  マーガレット・アトウッド

2009年04月21日 08:51

2001年10月31日発行 早川書房  1100円 

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マーガレット・アトウッド(1939〜)はカナダを代表する作家だそうです。
この作品ではアーサー・C・クラーク賞、カナダ総督文学賞、ロサンジェルス・タイムズ文学賞を受賞しています。
初めて読む作家なので、近未来を描いたこの小説が読み易いのではないかと思いました。
思っていたようなSF調の小説ではありませんでしたが、主人公の女性の思いが、頭にではなく、皮膚を通して浸透してしてるような小説でした。
本書を読んでも、男性はこういう感じは解らないだろうと思います。
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今から少し先の時代、アメリカ合衆国にキリスト教原理主義のギレデアという国が誕生した。
出生率の減少に危機感を抱いていたギレデア政府は、すべての女性から仕事と財産を没収し、妊娠が可能な女性を「侍女」と名づけて、エリート男性の家庭に派遣した。
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語り手の「侍女」オブフレッドを通じて、階級に縛られたギレデアの女性たちを描いたディストピア小説です。
侍女たちは、派遣された家庭の主人の名を取って「オブフレッド」「オブウェイン」「オブグレン」と、誰に所属しているのかがわかる名前で呼ばれ、妊娠することだけを求められて生きています。
近未来小説ですが、あとがきで落合恵子が書いているように、本書に描かれているのは過去と現在の女性の姿です。
既婚女性の殆どは、自分が誰かに従属して生きていると感じたことがあると思います。
そういう女性の気持ちが「侍女」を通じて細やかな感性で表現されています。

銀婚式   モーヴ・ビンキー

2009年04月20日 11:34

1996年12月20日発行 扶桑社  600円

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ドイル夫妻は、結婚25周年を迎えます。
ドイル家の家族を初めとして、ドイル夫妻の銀婚式に集うそれぞれの人間にスポットを当て各章で一人ずつ取り上げています。
ドイル家には、家族に起きた外聞の悪い出来事は話題にせず、外には決して漏らさない、という暗黙のルールがあります。
人がそれぞれ抱えていながら口にしない思惑を巧みに描いた小説です。
ドイル家の次女へレンと、銀婚式を執り行うハーリー神父を描いた章が特に印象に残りました。
21歳のヘレンは修道女見習いです。
非常に短絡的な考え方のヘレンは他人の役に立ちたいと願いながらも、突飛な行動に走ります。
ハーリー神父の姉の息子グレゴリーは、親の自慢の息子ながら、ひき逃げをしてハーリー神父の元へ逃げ込んで来ます。
日本にもこういう家族はいるし、ヘレンのような女の子や、好青年に見えながら責任を取らないグレゴリーのような若者もけっこう居るんじゃないだろうかと思います。
アイルランドとイギリスが舞台になっていますが、登場人物がとても身近に感じられました。