未分類日記画集短歌池澤夏樹池田晶子石牟礼 道子井上荒野打海文三垣谷美雨奥田英朗梶尾真治鎌田慧熊谷達也佐藤正午重松清篠田節子青来有一瀬尾まいこ高木 彬光高村薫津本陽辺見庸広瀬正町田康三浦しをん水谷修宮部みゆき山崎ナオコーラ山本幸久渡辺球「考える人」編集部ジョン・アーヴィングアリス・アダムズマーガレット・アトウッドヤン・アベリランス・アームストロングロナルド・アンソニージェニファー・イーガンケルテース・イムレリュドミラ・ウリツカヤマーガレット・エドソンキム・エドワーズフラナリー・オコナーポール・オースターイタロ・カルヴィーノジョイス・キャロル・オーツフィリップ・グランベールフィリップ・クロデールイーサン・ケイニンクラウス・コルドンジョゼ・サラマーゴシルヴィー・ジェルマンアーダルベルト・シュティフターベルンハルト ・シュリンクジョン・スタインベックスタンダールジョーダン・ソーネンブリックソルジェニーツィンエイミー・タンイヴァン・ツァンカルリディア・デイヴィスアイザック・ディネーセン ヨハンナ・ティデルドストエフスキートルストイジョアン・ハリスメリッサ・バンクメイブ・ビンチージャック・フィニイケン・フォレットファニー・フラッグレイ・ブラッドベリタナ ・フレンチリチャード・ブローティガンヘルマン・ヘッセカーレド・ホッセイニアンドレイ・マキーヌロン・マクラーティエリザベス・マクラッケンカーソン・マッカラーズユベール・マンガレリスティーヴン・ミルハウザーマーシャ・メヘラーンモームジェフリー・ユージェニスK・J・ラミンフィリップ・ロスロイス・ローリードリス・レッシングマイク・レズニックノンフィクション・エッセイ他ローリングス海外ミステリー南米の作家
読書記録です。
--.--.-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2009.06.26 Fri
2003年3月10日発行  集英社  2100円

02376349.jpg

熊谷達也(1958~)は、初めて読む作家です。
『相剋の森 』は、自然と共に暮らすマタギに焦点を当てた珍しい小説です。
     *************************************
仙台でタウン誌の編集長をしている佐藤美佐子は、「マタギの集い」という集会に取材に出かけた。
狩猟の楽しさや、熊肉の美味しさを喜々として語るマタギ達のようすに違和感を覚えた美佐子は、「今の時代に熊を食べる必要性があるのでしょうか」と発言して、マタギ達の顰蹙を買ってしまった。
そんな美佐子に、吉本というフリーカメラマンが声をかけてきた。
男女関係のもつれからタウン誌を辞めフリーのライターになった美佐子は、マタギを題材にした記事を書こうと思いたち、吉本と連絡を取った。
      *************************************
マタギという職業に対しても、ツキノワグマに関しても何の知識もなかったので、とても興味深く読みました。
熊と人間との関わりについてもっと踏み込んでほしかった、枝葉の恋愛の部分はいらなかった、と思います。
人間は野性動物とどう関わっていけば良いのかという疑問に、主人公は明確な答えを見い出せないままで小説は終わっています。
それはこの小説を書いた時点で、著者が答えを出せなかったからだろうと思います。
熊谷達也はこの作品以降もマタギや、自然とともに生活する人々を題材にした小説を執筆しているので、他の作品も追々読んで行こうと思います。
スポンサーサイト
2009.06.26 Fri
2005年10月10日発行
02606400.jpg

リディア・デイヴィスは(1947~)アメリカの作家です。
その作風から、カフカやベケットに例えられ、「アメリカ文学界の静かな巨人」と称されているそうです。

本書は日本で出版されているリディア・デイヴィスの唯一の著作です。
ほんの数行の短い文章から長いものでも30ページ程度の掌編、短編が51編収められています。

表題の『ほとんど記憶のない女』をはじめ、読みながら、これは自分と同じだ、と何度も何度も思いました。

けれど著者は、『共感』という最後の掌編で下記のように記しています。

私たちがある特定の思想家に共感するのは、 私たちがその人の考えを正しいと思うからだ。あるいは私たちがすでに考えていたことをその人が私たちに示してくれるから。あるいは私たちがすでに考えていたことを、より明確な形で私たちに示してくれるから。あるいは私たちがもう少しで考えるところだったことを示してくれるから。あるいは遅かれ早かれ考えていたであろうことを。あいるいは、もしもそれを読んでいなかったらもっとずっと遅くに考えていたであろうことを。あるいは、もしも読んでいなかったら考える可能性があっても結局は考えなかったであろうことを。あるいは、読んでいなかったら考える意思があっても結局は考えなかったであろうことを。 


日頃、心のなかにぼんやり浮かんでは消えていく感情の断片がそのまま文章になったようだと思うのは、あまりにも的確な表現に、そんなことを思ったことも無いのに、まるで自分が同じことを感じたかのように錯覚しているだけなのかもしれません。

51編のなかで、『十三番めの女』『ほとんど記憶のない女』『二度目のチャンス』『肉と夫』『私たちの優しさ』『俳優』『理解の努力』『ノックリー氏』『たいていの場合彼が正しい』『自分の気持ち』『グレン・グールド』『裏のアパート』『大学勤め』『混沌の理由』『共感』が特に好きです。
2009.06.25 Thu
2000年4月25日発行  新潮社  1800円



公開中の映画『愛を読むひと』の原作です。

年の差がある男女のラブストーリィ-なのかと思って読み始めたら、その後ろに人生の深い闇が隠されていました。

第二次世界大戦の敗戦国であるドイツの、戦後の物語です。
戦時中に自国の国民が行った行為をどう受け止めるのか、加害者として戦争に関わった人をどう捉えるのかが、小説のひとつのテーマになっています。
戦争には参加していない世代の主人公が、戦争加害者としての行為を受け止めようとして感じる苦悩は、同じ敗戦国に生まれた私にも理解できるような気がしました。

重いテーマを含んだ小説ですが、後半には、この小説のもうひとつのテーマである愛によってもたらされる静かな感動が待ち受けています。
     *****************************************
学校から帰る途中で体調を崩した15歳のミヒャエルは、介抱してもらったことがきっかけで、36歳のハンナ・シュミッツという女性と知り合い、愛し合うようになった。
ところがある日突然、ミヒャエルには何も告げずに、ハンナは姿を消してしまった。
それから数年後、法学を学ぶ大学生になったミヒャエルは、ゼミのために出向いた法廷でハンナとの再開を果たした。
    *****************************************
三部構成になっている小説です。
男の子の大人への目覚めを扱った作品は苦手なので、15歳のミヒャエルと36歳のハンナの恋愛を描いている一部を読んだときは途中で読むのを止めようかと思いましたが、三部の途中で泣きました。
最後まで読んでよかったです。

日本の東京裁判に当たるニュルンベルク裁判後に、ドイツが戦争加害者を裁いたアウシュビッツ裁判という裁判があったことを、この作品を読んで初めて知りました。
映画『私は貝になりたい』を観たときと同じように、戦争は戦闘や戦火での直接の被害の他にも様々な悲劇を生むということを、この小説を読みながら再び強く感じました。
2009.06.15 Mon
1994年7月15日発行

01068637.jpg

照柿(てりがき)とういのは、晩秋の西日を浴びた塾柿の色だそうです。

合田刑事が登場するシリーズで、「レディ・ジョーカー」のひとつ前の作品です。
登場人物が少ないので「レディ・ジョーカー」よりは楽に読めましたが、閉塞感の強い、どんよりと暗いミステリィーでした。
            **********************************
同僚の森と電車に乗っていた合田刑事は、電車のフロントガラス越しに跨線橋から赤い服の女性が落下するのを目撃した。落下する直前に赤い服の女と揉みあっていた男は逃走し、さらに青いスカートの女がその男を追うように走り去った。
電車をで降り、跨線橋の通路の壁に寄りかかっている青いスカートの女をみつけた合田は、会ったばかりのその女に強く惹かれるのを感じた。

同じ日の朝、バス停に立っていた「太陽精工株式会社羽村工場」に勤務する野田辰夫は、青いスカートをはいて歩いてくるひとりの女に目を止めた。
女は野田辰夫が結婚前に付き合っていた佐野美保子だった。
行き先を訊ねた野田辰夫に三保子は、居なくなった夫が見つかった、と応え足早に去って行った。
            **********************************
工場の溶鉱炉で働く人の気持ちが、追体験できます。
レンブラントの絵のように、ほの暗い世界のなかのところどころに鮮やかな色彩が印象的に使われている小説です。
私は、「レディ・ジョーカー」のほうが好きです。
2009.06.05 Fri
1997年12月5日発行   毎日新聞社  格1700円  
01476695.jpg  01476696.jpg

1998年度「このミステリーがすごい!」の国内版1位になった作品です。

高村薫は初めて読みました。
数年前ですが、テレビで高村薫が話しているのを見たことがあります。
女性を感じさせない硬質な雰囲気の容姿と話し方がとても印象的で、きっと私なんかでは歯が立たないような硬くて難しい小説を書いているに違いないと、高村薫の著作には手が伸びませんでした。

そんな印象だったのに、よっちゃんのお勧めで読んでみたら、読んでいる間ずっとこの小説が終わらなければ良いのに、と思うぐらい面白かったです。
          **********************************
青森県の貧しい小作農家の三男として生を受けた物井清三は、昭和22年、八戸の鋳物工場を解雇されのをきっかけに上京した。上野界隈でリヤカーを引きながらバタ屋をし、一年後やっと旋盤工の職に就き、4歳の娘を抱えた芳江と結婚した。家を売り貯金をはたいて薬局を買い取ったのは、物井清三が50歳のときだった。
1990年、物井清三の妻は既に他界し、娘の美津子は秦野浩之という歯科医に嫁いでいた。
その年の10月、孫の秦野孝之が日の出ビールの二次面接を終えた数日後に交通事故死し、11月には歯科医の秦野浩之が息子の後を追うように自殺した。物井清三は警察に呼ばれ、岡村清二について警察から質問を受けた。
岡村清二というのは、養子に行った物井清三の実兄だった。
息子の孝之が事故死した後、浩之は日の出ビールに手紙とテープを送りつけていた。そのテープは、岡本清二が日の出ビール宛てに書いた手紙を吹き込んだものだった。若い頃、日の出ビールの研究所に勤務していた岡村清二が、知人の解雇は部落差別によるものでは無いかと訴えている内容のテープだった。
そのことがきっかけとなり、物井清三は興信所に依頼し、音信不通になっていた兄・岡村清二の行方を探し始めた。
1994年5月に岡村清二が秋川の特擁老人ホームにいると確認されて以来、物井清三は一日置きに見舞いに訪れていた。
三ヵ月後、いつものように老人ホームを訪れた物井清三は、6人部屋のベッドで死んでいる兄を発見した。
頭の中で悪鬼の声を聞いた物井は、日の出ビールから金を搾り取ることを思いつき、競馬仲間を誘った。
          **********************************
登場人物の背景と心理が詳細に描かれているクオリティーの高い厚みのある小説でした。

7人の男性の視点が入れ替わりながら物語が進行していきます。
職種の異なるその7人の男性のなかで、私は物井さんが一番好きです。
自己の苦悩のなかで彷徨っている他の登場人物と比べて、物井さんは常に自分以外の誰かを気遣っています。
物井さんが犯罪に手を染めたのも、単なる私憤からではなく、世の中の理不尽さに対する怒りからのように感じました。
その物井さんの怒りは、弱者に心を寄せる著者の怒りでもあると思いました。
「レディ・ジョーカー」というタイトにも、そんな著者のスタンスが現れてるのではないかと思います。

物井さんを中心とした犯人グループに肩入れしながら読んでいたので、大満足の結末でした。
Template by まるぼろらいと
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。